5月 242010
 
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核兵器のしくみ (講談社現代新書) 核兵器のしくみ (講談社現代新書)
(2004/01/21)
山田 克哉

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先日、図書館で借りた本をようやく読み終わりました。

物騒なタイトルですが、そもそも原子爆弾と原子力発電は基本原理としては同じもので原発を保有する国は原爆を作る潜在能力もあるわけで、そのいずれかについて考えるためにはそのいずれもの科学的な仕組みを知らなければならないという辺りから著された書籍のようです。

まぁつまりは原爆や原発の賛成・反対とか言ったことよりも、科学的な仕組みを解説することに特化した本であるわけです。

パッと見なんだか難しそうな本に見えますが、実際は中学レベルの原子の説明から始まるため対象年齢はたぶん中学生・高校生くらいからだと思います。

原子の説明から核が中性子を吸収することによる核分裂にお話は進みます。

で、実際に核分裂しやすいウランなんだけど、ウランにはアイソトープが2つ(厳密には3つ?)あって天然のウラン鉱に含まれる99.7%がウラン238で残りの0.3%くらいがウラン235になる。

ちなみに原子の後ろの番号は陽子数+中性子数、ウラン238は陽子数92+中性子数146、ウラン235は陽子数92+中性子数143。原子は陽子数で決まってくるのでどちらも陽子数は同じだけど、ウラン235の方は中性子数が奇数で、なにやら陽子数が偶数・中性子数が奇数という組み合わせだと核分裂しやすいみたい。

ちなみにウラン238も中性子の衝突による核分裂はしないわけじゃないんだけど、中性子の衝突スピードというかエネルギーの閾値があるらしい。この閾値は水爆により発生する中性子だと簡単に閾値を超えてるので、水爆の威力を高めるために使われたりするみたい。

天然のウラン鉱にはウラン235とウラン238が混在してて、原爆の材料として使えるのはウラン235なのでコイツだけ取り出したい。

方法はいくつかあるんだけどいずれの方法もエライ金がかかるため濃縮ウランを生成するのは一仕事。

ちなみに一例としてあげると青森県の六カ所村にあるウラン濃縮装置は遠心分離法。

超大雑把に書くとウランを気体化させて遠心力をかける、ウラン235よりも238の方が中性子3個分重いので遠心力で外側に分離される。

中心に集まったウラン235が多く集まった気体に対して更に遠心力をかけ…、みたいな感じで濃縮ウランを生成する。

生成した相当数な濃縮ウランに中性子をぶつけてやるのが原爆というか核爆弾の仕組み。

核分裂時には相当数なエネルギー、つまりは熱が発生する、だいたい1000万度くらい。

で周囲との温度差により衝撃波なんかも起きる。

更には核分裂により大気中に放射線がまき散らされる、放射線はアルファ線・ベータ線・ガンマ線・中性子線の4つに分けられるけど、直接的・間接的な差はあるけど人体に有害。

電気的に細胞と強く反応するのでガン細胞に変異する可能性が飛躍的に高まったりとか。

更に更に核分裂後の分裂片が死の灰となって降ってきちゃったりする、分裂片には色々あるんだけど厄介なのがストロンチウムとセシウム。

水平リーベの元素周期表を見るとわかるけどストロンチウムはカルシウム、セシウムはカリウムと縦列が同じ。

縦列が同じってことは極めてよく似た化学的性質があるらしい。

カルシウムもカリウムも人体には必要な元素なんだけど、人体的にはそれぞれがストロンチウムとセシウムと混同しちゃって吸収しちゃう。

そうすると造血機能に影響が出たり白血球が減少したりする、これがいわゆる原爆症となる。

核爆発をゆっくりやって熱を効率的に利用しようってのが原子力発電の基本原理。

核爆発をゆっくりやるには核分裂に必要な中性子をゆっくりぶつけてやる必要が出てくる。

中性子のスピードを落とすために使われるのが減速材、日本の原子力発電で使われてる減速材は水。

減速材だけではまだ核融合炉の出力を安定させるには不足で、核分裂のための中性子の数を一定に保つ必要がある。

というのも核分裂が進むにつれ中性子の数がねずみ算式に増えるため。

中性子を吸着するのに使われるのが制御棒、核融合炉内にこの制御棒を深く差し込むことで核融合炉の出力を下げることができる。

核融合を進めると分裂片として色んなものが残る、そのなかのうちの一つがプルトニウム。

プルトニウムは陽子数94+中性子数145、つまりはウラン235と同じく陽子が偶数・中性子が奇数で核分裂しやすい元素らしい。

で、このプルトニウムを使って更に原子力発電しちゃいましょうってのがプルサーマル計画。

そろそろ書くのも疲れてきたんで更にテキトーに書くと、太陽が輝く仕組みは強大な重力による水素の核融合なわけで、同じ仕組みで考えられたのが水素爆弾。

ただ水素の核融合には莫大な熱量が必要なんで、その熱量を生み出すために原子爆弾が使われる。

あとは前述の通り水爆の破壊力を高めるためにウラン238も一緒に使う。

そうすると水爆ってのは、核分裂→核融合→核分裂という流れで爆発的なエネルギーを生み出す。

更に水爆の応用でウラン238を使わない物が中性子爆弾。

水爆の最後の核分裂が無くなるので爆発力はかなり弱まるが、代わりに核分裂に使われるはずだった大量の中性子がばらまかれる。

ほとんどの物質は中性子を吸収すると核分裂を起こさないで放射化され放射能を出すようになる。

つまり人体が中性子を吸収すると人体自身から放射線が出るようになる。

原爆のような衝撃波などは無いため建物や地形に影響を及ぼさず人体などのみに致命的なダメージを与えることができる。

なんてことが書いてある本でした。

まぁこの本自体も量子力学などの分野は相当端折ってるもので、上記はそれを更に端折ったものだけどw

あと実際は核分裂の説明なんかはもっと丁寧で、高速増殖原型炉「もんじゅ」なんかにも触れられてます。

核兵器などの根本的な仕組みが大雑把であれ分かるので知的好奇心を満たすには十分な一冊でした。

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